ウクライナ危機の影響

業界動向

2022年2月に開始されたロシアのウクライナ侵攻を発端に、日本政府はロシアに対する制裁措置を発動し、38品目についてロシアからの輸入を禁止しました。輸入禁止の対象となったものの中には、日本の木造住宅建築において重宝されるロシア産木材も入っており、安く使い勝手の良いロシア産木材の入手が難しくなってきています。

ウクライナ侵攻の影響に伴って、大幅な円安が追い打ちをかけるように木材市場を襲撃しています。ロシア以外からの輸入木材価格にも影響が生じており、木材価格は2021年に話題となったウッドショックの最高潮並みに高騰し、「第2次ウッドショック」とも呼ばれております。このような状況を受け、今後マイホームを購入しようとしている人達からは「住宅価格が高すぎる」という悲痛な意見も耳にする状況です。

そこで本記事では、一連のウクライナ危機の影響によって、住宅価格に一体どんな影響が表れているのか説明します。また今後どう推移していくのか、今後の動きについても解説します。

ウクライナ危機が影響!木材価格は昨年より約6割高騰

ウクライナ侵攻に対する制裁措置では、日本をはじめとした世界各国がロシアに対して輸入禁止措置などの経済制裁を実施しています。ロシア政府は、こうした各国の動向に対する報復措置として、日本を含めた各国を「非友好国」と認定。2022年末まで、チップ・丸太・単板といった木材製品の非友好国に対する輸出を禁止することを決めました。

その影響もあって、日本銀行が公表している「国内企業物価指数」の2022年4月速報値では、木材・木製品の物価指数が前年同月比で56.4%も急上昇しました。2015年の平均値を100とした場合の指数で171.7に達するなど、かなり目立った価格上昇が見られました。

中でもひと際、深刻とされているのが日本の住宅建築に必要不可欠な「合板」や「集成材」といった資材の価格の高騰です。「合板」とは、単板を複数枚張り合わせた建築資材のことを言い、壁や屋根の建材として使用されていますが、特に材質の硬いカラマツが好んで使用されています。中でもロシア産のカラマツは硬くて耐久性があるうえ、狂いが小さいとされるため、昔から住宅の土台材として活用されてきました。「集成材」とは、小さな木材を集めて接着剤で接着して成形された木材であり、家の柱や梁といった構造体に大切な建材です。

日本では、住宅建築に使用される木材のうち、実に7割弱が輸入材であるため、輸入材の価格高騰や需給状況は住宅用木材価格に直接影響します。こういった点から、ロシア産の木材入手が難しくなってしまった今、家づくりにも大きな影響が表れているのです。

[参考]

日本銀行調査統計局「企業物価指数(2022年4月速報)」

ロシア産からの切り替えも!しかしウッドショックによって見通しは不鮮明

これまでロシアからの木材輸入は、先ほど紹介したカラマツやアカマツがメインでした。特にロシア産カラマツは耐久性が強く、外装に用いる合板の材料としてニーズがあります。

実際、林野庁によると2021年時点で日本に輸入された単板のうち、ロシア産の占める割合は実に約8割にもなるといわれています。2022年に入ってからの木材価格高騰は、ロシア産木材の入手が難しくなってしまったことに伴う木材需給の均衡が、崩れたことが要因になっていると考えられるのです。

木材については、ロシアに代わる他国からの輸入へ移行も実施されているものの、2021年に問題化した世界的なウッドショック(アメリカの新築住宅需要増などが原因とされる)がまだ解決していないため、見通しは依然不鮮明といわざるを得ません。たとえば、アメリカ産製材の輸入物価指数は2021年12月頃からほぼ横ばいで推移しており、当面は高い水準が継続していくと見込まれています。

そこにきて、急激な円安によって輸入品の仕入れ値が上昇。追い打ちをかけるように、輸入材の価格が高騰している現状です。しかも、住宅用設備に不可欠なステンレスの原料であるニッケルや、半導体の材料となるパラジウムなどもロシア産への依存が強く、木材以外の資材も軒並み価格が高騰しています。

このような資源価格の高騰などが要因となって物価高が収束せず、国内企業物価指数の上昇につながっているといえます。コスト高は消費者への販売価格等に転嫁されるため、今後インフレも心配されるでしょう。インフレになると不動産価格も上昇します。さらに、不動産価格はもともと高値であるため、上昇幅も大きくなることが予想されます。これから住宅の購入を検討している方は、インフレ後の住宅価格の上昇率についても考慮しておくことが大切であるといえます。

資材価格高騰の影響で、住宅価格はどこまで上昇する?

それでは、今後資材価格高騰の影響により、住宅価格はどこまで上昇していくのでしょうか。

経済産業省によると、新築戸建住宅の建材として使用されている合板や集成材などの国内での価格は、過去の水準と比較して非常に高水準で推移しています。一方、木材やそれ以外の住宅設備の価格上昇なども相乗して、新築戸建住宅の取引需要自体が抑えられている可能性があるとの見解もありました。

こうした考察を背景とすると、2021年3月頃から始まった世界的な「ウッドショック」は、需給バランスの崩れによる全面的な価格上昇という局面からは脱却したという捉え方ができるでしょう。経済産業省は、木材の種類に応じて需給バランスがとれた価格形成が実施されていく新たな局面に移行してきていると見ています。

現在、合板の国内価格は高止まりとなる一方、その他の木材価格はピークアウトの兆しが見られることに追加し、新築戸建需要も下がっている傾向にある状況といえます。つまり、このような流れが続いてしまえば、新築戸建住宅の価格も現在と比較して低下していくのではないかと、経済産業省は予想しているのです。

社会情勢のみでなく、様々な視点でマイホーム購入を考慮しよう

これまで紹介してきたウクライナ情勢によって発生した建材や住宅設備価格の高騰をはじめ、ウッドショックや新型コロナウイルスの感染拡大など、近年マイホームの購入を検討している方にとっては、マイナスなニュースが継続していると感じるかもしれません。しかし、住宅ローンの金利は超低金利の時代が継続しているうえ、新築住宅取得における住宅ローン減税が原則13年に引き延ばされるなど、今もなおマイホーム取得の好機であることは間違いないでしょう。

家を購入するタイミングは社会情勢を視野に入れることも重要ですが、何よりも自分や家族のライフステージを見据えて考えることが大切です。まずは、「毎月いくらまでなら支払えるのか」「自分の経済状況でいくらまで借り入れられるのか」といった想定を先につかんでおくと、理想の家に出会えたときに動きやすくなります。

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