インターネット上の仮想空間である「メタバース」をビジネスで活用する試みが拡大している中、住宅業界でも新しい取り組みが始まりつつあります。2022年には大手住宅メーカーが参入し、メタバースならではのアバターを通じたコミュニケーションを活用して、物件の内見はもちろん、購入の相談からオンライン契約まで実施できるサービスが誕生しています。
移動時間の短縮によって効率的な住まい探しが出来るようになり、コロナ禍でも社会活動が制限されない面はメタバースを利用する大きな利点です。そこで、本記事ではメタバースを活用した住まい探しに着目して解説します。
仮想空間「メタバース」を活用した住まい探しとは？
メタバースは自分の分身となる「アバター」と呼ばれるキャラクターを操作して、仮想空間上を体験できるシステムです。この技術は従来ゲームの世界で使用されていましたが、技術の進歩とともによりリアルになったことで、ビジネスの世界にも大きな影響を与えました。不動産業界でも大手住宅メーカーを中心として、メタバースを活用した住宅販売が拡大しつつあります。
2022年4月には、大和ハウスが日本の住宅メーカーとしては初めて「メタバース住宅展示場」を公開しました。さらに同年9月には、住友不動産が新築分譲マンションの販売を、メタバースを利用した「メタマンションギャラリー」で実施する予定です。
メタバースによる住まい探しの利点は、仮想空間上に建物を再現することで、未完成の物件であっても契約前に物件の所々まで確認できる点です。またアバターを通して、住宅展示場内を自由に見学できるのはもちろんのことで担当者と、直接意思疎通を図る事が出来るので、内見しながら気になる点をすぐに質問できます。これまでの実物見学会では困難であったすべての部屋の内見が可能になるなど、メタバースならではの利点によって消費者の住まい探しの利便性がより向上することが期待されています。
VRモデルルームにはない魅力も！
不動産業界では、今まで仮想空間上のモデルルームとしてVRが導入されていました。たしかに、VRを活用することで自宅から物件の下見をして、部屋の雰囲気や設備のチェックをすることは出来ます。しかし、VRにはアバターの存在がないため、あくまでも見ることしかできません。一方、メタバースにはアバターという自分の分身が存在しているため、色々なアクションを取れる事が特徴で、仮想空間上でのイベントへの参加や商材の購入なども出来るのです。デジタル改革関連法の施行によってオンライン取引が出来るようになった現在では、メタバース上で不動産売買契約まで可能となりました。
このように不動産業界を囲う情勢の変化を受けて、早くから新しい試みにチャレンジしている企業もあります。例えば、リビン・テクノロジーズ株式会社は2022年8月に「メタ住宅展示場」をオープンしました。これは、全国約350カ所に点在するVRモデルハウスをまとめたもので、消費者は現地に行かずとも、さまざまな物件を内見できます。メタ住宅展示場には大手ハウスメーカー以外にも、これまで住宅展示場に出展していなかった中小規模の工務店の参画も多数見込んでおり、同社が年間80万組の来場者を予想していることからも、大きな期待を集めていることが分かるでしょう。メタバースの市場規模は今後も急速に大きくなることが予期されているので、不動産業界でもこの先、メタバース上で住まい探しをするのが一般的に普及していくかもしれません。
メタバースで住宅は「試し住み」が可能な時代になる！？
VRは一定条件のもとに作られた動画などを見る事しか出来ませんでしたが、メタバースならそこにリアルタイムに新しい条件を付与することが出来ます。それによって、今まではできなかった仮想空間上で試し住みが出来るように研究されています。例えばハウジングテック企業の「JIBUN HAUS.」は、ゲーム・アプリの開発を行っている会社と結託して、仮想空間上で暮らしの疑似体験ができるバーチャルモデルハウスをリリースしました。
バーチャルモデルハウスでは天候や日差しの傾き方を変更することができ、実際の住宅展示場に一度赴いただけでは把握できない情報を確認できます。また、子どもや高齢者の視点にするなど、視線の高さ調節や建材または床材の変更も簡単に可能で、様々な視点から住まい選びができるのも特徴です。
これまでの住宅は高額な買い物でありながら、洋服のように試すことは不可能でした。しかし、メタバースの普及によって担当者と意思疎通を図りながら、自分にとって納得のいく仕様選びを気軽にできる時代に変わりつつあります。
日々の暮らし以上に資金計画もシミュレーションしよう
メタバースで住宅探しをすれば、物件のリアルな情報が把握できて、満足度のいく住まいを見つけるのに役立つでしょう。仮想空間上ではあっても、事前に床や壁紙の色、さらに動線などについて念入りなシミュレーションをしておくことで日々の暮らしのイメージが把握しやすくなるはずです。 なお、事前のシミュレーションが重要なのは住宅購入において大きな問題になりがちな資金計画も同じです。住宅ローンについてもシミュレーションを確実に実施しておくことで、具体的な返済についてのイメージがしやすくなり、納得のいく住まい探しにつながります。サイト内には住宅購入予算を考慮するのに適した4つのシミュレーターを用意しているので、これから住宅探しを始める人は満足のいく住まいに出会った時のために試してみてはいかがでしょうか。
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