「新人教育をしていて、近頃の新人の考えていることがわからなくて頭を悩ませた」という方だったり、「将来的に新人教育を担当するので悩ましい」という方もいるかと思います。
そこで今回は、新人教育を上手に行うポイントについて解説します。
そもそも新人教育の意味や目的とは何か?
新人教育の目的としては、新人の即戦力化を目指し、企業全体の戦力を底上げすることです。
高い生産性を持ち、戦力として使える人材をスピーディに育成できれば、結果的に新人教育の担当者自身が楽に仕事を進められます。仕事の分担も簡単になり、個々の業務量を均一にできます。業務にゆとりが持てる分、高品質な業務をこなせるので、適切な新人教育は企業の成長に役立ちます。
またコロナ禍における人材の流動性は激変しており、業務内容ごとに柔軟な人員配置をするにあたり、新人をいかに早急に「一人前」にするかが重要視されます。
新人教育の失敗例
ここでは、新人教育でついやりがちな失敗例のご紹介をします。今まさに、新人教育でお悩みの方は、無意識下で失敗例に当たる新人の指導を行っている可能性があります。
新人教育のやり方次第では、新人が塞ぎ込んでしまい、コミュニケーションがスムーズに取れなくなることも珍しくありません。「最近の若者はわからない」と思うのではなく、まずは自身の教育方法を振り返ってみてください。
社内用語及び新人がわからない言葉の多用
社内だけしか通じない専門用語や、新人がわからないようなビジネス用語を多用してしまうと、新人は教育担当者が伝えたいことが何かわからなくなります。
例えば当然のように使いがちな「アライアンス」「PDCAを回して」「コミット・コミットメント」のような言葉も、多くの新人は理解できない可能性が高いです。
「わからなければ質問してほしい」と思いがちですが、新人からすれば教育担当者の話をその都度、遮って質問するのは勇気がいります。不明点が質問できないことは、新人が辞める原因のひとつとして少なくありません。
心理的安全性の担保がない
心理的安全性(psychological safety)とは、チームメンバーの1人として気兼ねない発言や、自分本来の姿を安心してさらけ出せる雰囲気やチーム環境を指します。新人への心理的安全性がきちんと担保されているかを見極めることも、重要なことです。
仮に新人がミスをしても、心理的安全性が担保されていれば、新人としては周りが自分のミスを承認し受け入れてくれることを感じ、次の仕事への反省・立ち直りが早くなります。しかし心理的安全性が担保されなければ、新人は誰にも相談できないまま、一人で落ち込んだ気持ちや悩みを抱え込むことになります。
相談しない新人に落ち度があるのではなく、新人が相談しにくい雰囲気が問題の可能性もあります。
仕事の目的や背景を伝達しない
新人につい、業務の概要や内容ばかりを伝えていませんか?仮に目的や背景も言わず、ただ「日報をつけなさい」と指示を出しても、新人は「なぜこんなことをする必要があるのか」と疑問もしくは不信感を抱き、モチベーションの低下や早期離職の原因になり得ます。
「日報を付けるのは当然のこと」と捉えずに、「上長がメンバーの状況を理解し、評価するのに必要なため」「日頃の振り返りが課題の可視化になり成長につながるため」など、言葉にするのが重要なのです。
新人個々のビジョンを考えず、組織の意向のみ考えて仕事の丸投げをしてしまう
新人の個々のビジョンが、全て組織と同じ方向に向いているとは考えにくいです。将来的に独立を目指す新人もいれば、今より多く稼ぎたい新人もいます。新人の数だけ多種多様な目的や価値観があるのです。
それにも関わらず、組織の意向だけの視野で、仕事の丸投げをし続ければ、新人のモチベーションは下がります。「新人個人のビジョン=組織のビジョン」とは違うことを前提に、新人個人のビジョンを理解し、そこにとりあえず沿うことも重要です。
新人教育の5つのコツ
新人教育は1つの段階ごと順番にステップを踏んでいき、各段階ごとに異なる教育をしなければなりません。「このくらいわかるだろう」と基本を省略して先に進むと、新人の成長はそこで途絶えてしまう恐れがあります。
そこでここからは、段階的な教育のステップとそのコツを5つ解説していきます。
ステップ1:新人が仕事をしやすい雰囲気を作る
失敗例に「心理的安全性の担保がない」ということを挙げましたが、これを回避するには始めに、新人が仕事をしやすい雰囲気を作ることが大切です。
仮に、新人が遠慮をして声をかけられない状況を避け、気軽に質問や相談をしてもらうには、メンター制度を採用する、雑談などのコミュニケーションの時間をあえて設けるといった対策が有効です。
そのほか、失敗時にリカバリーしやすい、またミスをしても評価が落ちないような評価制度を築き、失敗や挑戦におおらかな社風を養うことも重要です。実際に、新人がミスした場合でも、解決策に焦点を当てた対応を心がけましょう。
ステップ2:新人のステータスや新人個々の目標の把握
失敗例の「新人個々のビジョンを考えず、組織の意向だけ考えて仕事の丸投げをする」の解決にリンクする話です。
人間はそれぞれに向き不向きだったり好き嫌いが違います。まずは新人のそれぞれの個性に気を配り、それぞれの目標を把握できれば、どうやって教育すべきかがわかってきます。仮に将来、独立してフリーランスとして稼ぎたいと考える新人には、一人でも仕事を回すことができるように仕事全体の流れを網羅的に教えれば、積極的に吸収しようとするはずです。
ただし、新人のステータスや目標の把握には、心理的安全性を保証した上で月数回の1on1の面談を実施するなど、会社としての具体的な取り組みが必須です。
ステップ3:仕事の目的と背景を伝達
こちらも同様で、失敗例の「仕事の目的や背景を伝達しない」ことの解決方法です。対策はシンプルで、実際に教育をする過程でなぜその仕事を新人に与えたのか、組織の目的や背景を説明すること。
前項にあるように新人のステータスや目標の把握をしておけば、なぜその仕事を与えたのかという理由の説得力が強くなります。
組織が自分に何を求めるのかを把握して、その仕事はどんなスキルを伸ばすためのものか、チームで仕事をする上では、どのような効果があるのかなどが明確化できれば、新人はモチベーションが上がり、積極的に業務に取り組めるでしょう。
ステップ4:自走可能な人材に必要な思考力を修得させる
「自走可能な人材」とは、自ら考えて行動し、仕事を生み出せる人材です。新人が仕事で悩んでいる際に、教育担当者は悩みの解決をするのではなく、出来るだけ、解決のヒントだけを与えるべきでしょう。
ヒントをもとに考え、問題を解決させることにより、新人が「指示待ち人間」となることを未然に防ぎ、自走できる人材への成長を促します。時間はかかっても、自走可能な人材を作るためには有用性を持つコストです。
ただし、ヒントを与えて放置するのはNGです。新人がどうしても行き詰まった際には、しっかりとフォローしましょう。
ステップ5:次の仕事に活かせるフィードバックを行う
フィードバックとは、業務内容及びその成果に対して、「何がよかったか」「もっと効率的な方法があったのではないか」と評価し、ブラッシュアップするプロセスのことです。
フィードバックは新人との交流のきっかけ作りにもなるので、なるべく有益なフィードバックを心がけましょう。
その際に、フィードバックが「頭ごなしの説教」になるのはNGです。失敗の批判ではなく「なぜダメだったのか」の論理的な説明により、今後の業務に活用できる改善点を把握させましょう。
新人教育の効果的なな手段
新人教育は、通常では主に「マニュアルを」「OJT」「Off-JT」の3つを上手に組み合わせて実施されます。これから新人教育を行う方も現在進行形で新人教育している方も、ぜひご活用ください。
マニュアル
わかりやすく、活用できるマニュアルがあれば、新人は何回も業務内容の手順を見返して学べます。テキストだけのマニュアルの場合、作成する方も読む方も難しいので、動画や画像を載せたマニュアルが効果的です。仕事の手順が明確になり、スキルを持たない新人でも簡単に業務を行えます。
OJT
OJT(On-the-Job Training)は現任訓練とも呼ばれており、教育担当者が付き添い、現場で業務スキルを学習する方法です。実務を通じた実践形式の研修の場合、通常業務の具体的手法が学べます。OJTの経験があれば新人の生産性は飛躍的に向上し、即戦力として活躍が期待できるでしょう。
またOJTは、個人の特性ごとのスピードや内容でトレーニングを積むことが可能なだけでな
く、特別な準備がいらないので教育費用も抑えられます。
Off-JT
Off-JTとは職場外でビジネスの基礎や専門知識、業務内容を学ぶ教育訓練を指します。OJTとは違い、実務を離れた座学での研修なので、Off-JTを行う際には特別な時間を設けなければなりません。
「実践形式のOJTのみで問題ないのでは」という意見もありますが、通常の業務を行いながら指導するOJTのみでは、十分な教育ができない可能性があります。
特に部署によってはOJTのみでは基本的なビジネスマナーを学ぶ機会が得られないことがあるので、Off-JTの経験は新人の将来を考慮すると大切です。
業務のマニュアル化が新人教育の鍵
ここまでの解説のように、新人教育には押さえるべきポイントや手法が存在します。中でも、テレワークの推進化により、OJTやOff-JTがしづらい現状で特に注目してもらいたいのが「マニュアル作成」です。ここではその理由とマニュアルのメリットを解説します。
「マニュアルを見ればできる」状態が即戦力育成に直結する
実は、業務の8割以上はマニュアル化ができると言われています。業務の大半は「誰がやっても同じ単純型」と「一定のパターンより選択する選択型」に大別できるからです。マニュアル化不可能な「経験や知識に基づく高度な判断を伴う感覚型」の業務は、わずか1~2割程です。
つまり、業務をわかりやすくマニュアル化できれば、新人社員の場合でもマニュアルを研修材料に、ほぼ全ての業務をすぐに真似して実践できるということです。
「すぐに完璧な習得は不可能だろう」と思われがちですが、実際には全てできる必要は全くありません。まずは、標準化された業務を6割程でもやれることが重要なのです。
一度業務の遂行ができたら、フィードバックと改善を繰り返していきましょう。PDCAを回すことで新人はもっと成長し、社内には育成ノウハウが構築されていきます。
また、マニュアルで予習し、OJTで実践のようなサイクルを作ると、教育効果はさらに上がるでしょう。
マニュアルによる育成のメリット
マニュアルのメリットは他にもまだあります。ここでは学ぶ側、教える側それぞれの視点について解説します。
<学ぶ側のメリット>
学ぶ側からすれば、いくらOJTで指導があっても、学んだことを忘れることはよくあります。しかしながら、教育担当者に同じことを聞けないのは本記事で説明してきた通りです。テレワーク時だと、なおさら聞きづらさが増します。
そんなとき、マニュアルがあると、すぐにわからないことを調べられるので、心理的安全性に直結します。また、マニュアル内容が業務の基準になるので、「先輩によって言うことが違う」という事態も起きづらく、迷いも減るでしょう。
<教える側のメリット>
教える側も、教科書のように見ることが出来るマニュアルがあるのは安心材料になります。人によって異なる内容や誤った情報を教えてしまうという不安をなくせます。
マニュアルを使えば、ある程度のレベルまでは新人自身が自走して学んでくれるので、教育に割く時間の削減にも直結します。
マニュアル作成のコツは「デジタル」で「わかりやすく」
このようなメリットを享受するためには、マニュアルが使いやすく、わかりやすいものである必要があります。例えば文字や専門用語が密集したマニュアルでは、新人が見ても理解できないので活用されず、効果が発揮されません。
また紙のマニュアルの場合アップデートの際に周知に時間を要し、保管するのも手間になります。更新及び活用のしやすさを考慮すると、マニュアルはデジタルでの運用がマストです。デジタルの場合、テレワークの環境の中でも新人に遠隔で学習を進めてもらえるのもメリットです。
まとめ
新人教育は企業の成長には欠かせません。新人教育の上で重要なのは、新人の心理的安全性の担保と、安心して働ける雰囲気づくりです。
そのためには、新人がゆとりを持って何回も見返せるマニュアルの作成も重要な要素です。
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